2015年02月01日

金融機関破たんの発生プロセス

今更聞けない金融危機、前回まではサブプライム問題の発生から、サブプライム関連金融商品の世界的信用不安を引き起こしたパリバ・ショックの発生までをみてきました。

前々回の記事:サブプライム問題
前回の記事:パリバ・ショック

今回からは、それらの問題が集約する、リーマンショックについてみていきたいと思います。

リーマンショックとは、アメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズが倒産することにより発生した世界的な不況のことなのですが、まずそもそも倒産とはどういうことを意味するのでしょうか。

<倒産とは>

多分、大多数の日本人が知っている「倒産」という言葉ですが、そもそもどういった時に倒産が発生するのでしょうか。巨額の赤字が発生したとき?赤字が続いたとき?いずれもNoとなります。

株式会社シャープは3000億円を超える赤字を計上してもまだ倒産はしていませんし、株式会社ダイエーは6期連続で赤字を計上していますが、倒産していませんでした(最終的にイオンの子会社になってしまいましたが)。

では結局、倒産とは何なのか。会社の情報を取り扱う大手企業の株式会社帝国データバンクでは、倒産を以下のように定義しています。

<倒産の定義>

  • 銀行取引の停止処分を受ける
  • 内整理する(代表が倒産を認めた時)
  • 裁判所に会社更生手続開始を申請する
  • 裁判所に民事再生手続を申請する
  • 裁判所に破産手続開始を申請する
  • 裁判所に特別清算開始を申請する
  • *株式会社帝国データバンクより引用

    なかなか分かりにくいですね。そこで今回は単純に、以下のように考えてもらえば問題ありません。

    倒産とは、「返済義務を果たせなかったとき」に発生する。

    まだ少し硬い文面なので、もう少し単純にして

    「お金を払えなくなったとき」

    が倒産という認識で大丈夫です。お金を払えなくなったときに企業は倒産します。つまり、赤字だろうがなんだろうが、お金を払う能力があれば倒産はしません。逆に、事業が黒字でもお金を支払うことができなければ倒産します(これが黒字倒産です)。

    では次に、どうしてお金が集まる銀行が倒産するかについてみていきます。リーマン・ブラザーズは厳密には銀行ではなく投資銀行なのですが、そちらの倒産を理解する前に銀行がどうして倒産するかを見た方が理解しやすいと思います。

    <銀行がなぜ倒産するのか>

    銀行には僕たちのお金が預金という形で集まります。倒産の定義が「お金が払えなくなったとき」であれば、最もそこから縁がなさそうなのが銀行のはずです。お金が集まる場所ですから。しかし、金融危機が発生したことからわかるように、日本の歴史をみてもわかるように、普通に銀行も倒産します。それはなぜでしょうか。

    それを理解するために、我々が預けたお金がどうなるかについてみてみます。まず、僕がA銀行に100万円を預けたとします。すると、A銀行は最低水準の金額だけを残して、残りは全て貸し出します。(ここではわかりやすくするために、その最低水準を10%とします。また、銀行が投資することについては考えないことにします)

    僕がA銀行に100万円を預けました。するとA銀行は、10%、つまり10万円を残して残りの90万円は必要な企業などに貸し出します。例として、B株式会社に90万を貸し出します。そのB株式会社から金利をもらい、僕に金利を支払い、その差額で儲けるのが銀行のもっとも基本的なビジネスモデルです。

    さて、その90万円を借りたB株式会社はどうするのか。借りて即座に全て使用するものでなければ、まずは銀行に預けるはずです。B株式会社はA銀行から借りた90万円を、一旦A銀行に預けることになりました。すると、A銀行はその預かった90万円の10%、つまり9万円を残して、残りの81万円は全て貸し出すことになります。A銀行は次に、C株式会社に81万円を貸し出しました。C株式会社はその資金81万円を即座に全て使用するわけではありません。A銀行に一旦預けることになりました。A銀行は預かった81万円の10%、つまり8万1000円を残して残りは全て貸し出すことになります。

    上記のようなプロセスを経て、僕の100万円がどんどんといろんな場所に貸し出されていきます。これを「信用創造」といいます。

    銀行が倒産するポイントは、銀行が預かったお金をすべて手元に置いていないことにあります。では、銀行が急に大規模なお金を調達する必要が発生した場合はどうするのでしょうか。A銀行としてはお金を他社に貸し出していて、手元にありません。そんなときのために、銀行同士の資金需要を埋めるための、「インターバンク市場」というものがあります。

    インターバンク市場とは、単純に言うと銀行間だけでお金の貸し借りをしているところです。上記の例では、A銀行が100万必要になったので、インターバンク市場で100万を貸してくれ、と頼むわけです。そこで資金が余っている他の銀行(例えばB銀行)が、100万円をA銀行に貸し出すわけです。そして他人の預金や貸していたお金が返ってきてから、B銀行に100万円と金利をつけて返すわけです。もちろんA銀行に資金が余っている場合は、他の銀行に貸し出しも行います。

    つまり、銀行にお金が必要になった時は、他の銀行から借りることでまかなうのです。ここに、銀行の倒産の原因が隠れています。次に、銀行の倒産原因についてみていきます。

    <銀行の倒産原因>

    結論から言うと、「悪いウワサが出て、誰からもお金を借りられなくなった銀行」が倒産します。

    例えば、過去の日本のように、バブル崩壊というものが発生したとします。その際に、土地の値段がどんどん値下がりし続けるとします。そして、A銀行が儲かるからという理由で土地にたくさん投資していたとします。

    すると、ウワサが広がりはじめます。

    「A銀行は土地にものすごく投資していたので、どうやら損失がとてつもないらしい。」
    「A銀行は現金を集めるために、持っていた投資商品を売りまくっているらしい。」
    「どうやら官僚がA銀行の破たん(倒産)を容認するらしい。」

    などです。すると、預金者が一斉にA銀行へお金を引きおろしに行きます。A銀行に預けていては自分の預金がどうなるかわからないですからね。すると、A銀行からさらに現金が流出します。今ではネットで一瞬で他の銀行へ預金を移動できるので、現金の流出スピードはとてつもないことになります。

    次に、上記の銀行間でやり取りをしているインターバンク市場でも異変が起こります。各銀行が、A銀行との取引をしなくなります。

    A銀行「お金貸して」

    他の銀行「やだよ。貸してもし君がつぶれたら戻ってこないじゃん。」

    A銀行「えっ」

    A銀行としても、自分は大丈夫だ、と主張することしかできません。「ものすごく高い金利をつけて返すから!」と言ったとしても、逆に「あ、本当に危ないんだこいつ」と考えられてしまうからです。

    こうして、A銀行は何かの支払日に十分な現金を用意することが出来ずに倒産となります。銀行がなぜ倒産するのかを簡単に説明するとこういうことになります。それを防ぐために行われるのが、「公的資金の注入」というものです。一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

    では、日本で一時期流行した、公的資金の注入とは何を意味するのでしょうか。それは、つぶれそうな金融機関(現金が確保できなかった金融機関)に、税金を支払うことです。これは色んな方法があります。株式を政府機関が購入することもあれば、民間の銀行につぶれそうな銀行を買収させて、その買収した銀行に税金を渡すこともあります。「公的資金」とわけのわからない呼び方になっていますが、税金です。なぜか。銀行は預金者がたくさんいるので、つぶれたときの影響が非常に大きいからです。

    そのため、銀行はおかしなことができないように業務をガチガチに規制されているのです。

    長くなったので今回はこのあたりにしておきます。次回は投資銀行ベア・スターンズについて書いていきたいと思います。

    次の記事:ベア・スターンズと投資銀行

    ではでは


    posted by 鈴木明 at 16:05 | [金融] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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