2015年02月22日

リーマンショックその後

今更聞けない金融危機、これまではサブプライム問題からリーマンショックまでを見てきました。非常に長かったです。それぞれの記事は以下になります。

サブプライム問題
パリバ・ショック
金融機関破たんの発生プロセス
ベア・スターンズと投資銀行
リーマンショック1
リーマンショック2

今回は、その金融危機が発生した後の世界の流れについてみていきたいと思います。100年に1度と呼ばれた金融危機が発生した後、世界経済は停滞し、たくさんの失業者が発生しました。その原因となった金融機関たちに対して、世界中の一般市民から「もっと規制を厳しくしろ」「金融機関のやつらに調子にのらせるな」、という声が上がりました。そして、二度とこのような問題を発生させないようにするため、世界のトップが集合し、世界に向けて声明を出しました。それが、G20のピッツバーグ・サミットです。

<G20ピッツバーグ・サミット>

G20というのは、簡単に言うと「自分の国はすごい、世界をリードしている優秀な国家である」と思っている国たちの集まりです。昔はG7(アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、日本)だけだったのですが、近年ではG7だけで世界経済をけん引していた時代は終わり、現在では自分たちをすごいと思っている国は大きく増えてG20(G7にEU、南アフリカ、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ロシア、サウジアラビア、トルコ、オーストラリア、インド、インドネシア、中国、韓国を加えたもの)となっています。

そのG20が、アメリカのピッツバーグに集まり、話し合いを行い、これから金融機関や市場が今後どのようにあるべきかについての表明を行いました。これがG20ピッツバーグ・サミットの首脳声明と呼ばれています。ネットで検索すると、外務省などのホームページで日本語に翻訳されたものなどをみることができます。その内容には、この公表から現在まで続く、金融機関や市場への規制の方向性が示されています。現在、金融機関や市場に様々な形で規制が現在進行形でかけられており、今回はその規制についてざっくりとみていこうと思っているのですが、どのような規制がかけられているかを確認する前に、今回の金融危機が発生したことに対し、実際はどのようなことが問題だったのかを書くと理解が深まると思いますので、まずはそちらから確認していきたいと思います。

<金融危機で判明した問題点>

今まで、金融危機に関しての経緯を見てきたのですが、結局は何が問題だったのでしょうか。考えられる問題点を列挙していくと、非常に多くの問題点があげられるのですが、これらを大きくまとめると、3つ(実質は2つ)の大きな問題にまとめることができます。

問題点1:金融機関そのものに関する問題

金融危機の問題点の一つ目は、金融機関そのものに対する問題になります。当然の話ですが、金融機関が健全であれば問題は発生しなかったはずです。例えば、銀行は預金者から預かったお金をしっかりと与信審査をした企業などに貸し出し、そのローンの利子で収益を出す本来のビジネスモデルに忠実になっていれば今回の問題はあっさりと切り抜けられたはずです。その他の金融機関も本来のビジネスをしっかりと行っていればこの問題では大きくダメージをうけることはなかったでしょう。

ところが、金融機関は本来の業務から離れたサブプライム投資に熱心になり、結果的にあのような結末になってしまいました。しかも、「Too big to fail」と言われるように、金融機関はつぶれるとその影響が預金者など、非常に広範囲にわたります。その経済活動上、非常に重要な地位にある金融機関がつぶれそうになること、それが一つ目の問題です。

問題点2:市場に関する問題

二つ目の問題として、この金融危機の際、一つの金融機関が破たんすると、それに連鎖するようにバタバタと周りの金融機関もつぶれる事態になりました。つまり、市場を通して危機が連鎖していくことが問題とされました。ぷよぷよの連鎖みたいなものですね。その問題を大きくした原因の一つとして、「店頭取引」があげられます。

店頭取引とは、取引の当事者が、取引所を介さずに自分たちで直接やりとりする取引(相対取引)のことです。なぜ日本人はこのようなわかりにくい単語(だって店頭取引ですよ)にするのか不思議ですが、店頭取引とは具体的に言えば、A銀行とB銀行が、直接電話などで「○○を100円で売ってよ」「OKだよ」とやりとりすることを指します。取引所を介さないことが特徴です。逆に、一般人が株式を売買したいときなどは、例えば東京証券取引所を介して行います。東京証券取引所に株を買いたい人や売りたい人が集まり(厳密には証券会社を通して)、取引所を介して株の売買をするのです。これにより、金融庁などは東京証券取引所を管理すれば全ての売買を管理することができます。

ところが、上記のような銀行と銀行が直接やりとりするような店頭取引だと、誰がどれだけの取引を行っているかを金融機関の管理している国の機関(金融庁など、当局という)は管理することができません。仮にできたとしても膨大な労力が必要となります。このような状況のため、リーマンブラザーズがつぶれたとき、当局は誰がどれだけ取引を行っているのかを適切に把握することができませんでした。このように、取引所を介さない取引が大量に行われていたことも、金融危機の拡大の原因となってしまいました。

問題点3:その他の問題

そして、上記の金融機関そのもの、市場に関する問題以外にある、その他の細かい問題がありました。例えば、金融機関で働いている人に対する収益に連動する報酬が高すぎることや、金融機関が開示する情報の内容が十分でないといったことなどです。

このように、金融機関そのもの、市場、そしてその他の細かい問題が複雑に絡み合って、巨大な規模の不況を生み出してしまいました。そのため、上記のようにG20が集まり、これらのそれぞれの問題に対して、今後に同様の問題を起こさないために、それぞれに規制をかけていこうという流れになりました。以下からは、特に重要である金融機関そのものと、市場に対する規制についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

<プルデンシャル規制>

こちらは、金融機関そのものに対する規制になります。まず、銀行がまともな経営を行うようにするために、銀行をがちがちに規制で固める規制が生み出されました。それが「バーゼルV」です。これまでも銀行を規制するバーゼルUというものがあったのですが、今回の金融危機の発生を防ぐことが出来なかったということで、バーゼルUを大幅に強化して「バーゼルV」というものを作りました。

バーゼルVにて主に規制されているものは以下になります。

  • 証券化商品への資本賦課:証券化商品に投資する際に、自己資本の要求
  • トレーディング勘定への資本賦課:トレーディング勘定の取引に対する自己資本の要求
  • レバレッジ比率規制:大きくレバレッジをかけられないように水準を制限

  • などになります。専門用語ばかりでいやになるかもしれませんが、つまりは銀行に本来のビジネスモデル以外の業務を行う際にはより多くの自己資本を要求するような規制ができたのです。他にも、流動性を確保するための規制などが課せられることになりました。これらを通して、銀行が破たんすること自体を防ごうということになりました。

    さらには、仮に破たんしたときにどのように処理を行うかを事前に計画しておくように、という規制も出来上がりました。一定規模以上の銀行は、自分が破たんしたときにどのようにするのかを計画しなければならなくなりました。このように、銀行が今回の金融危機を発生させたことを二度と行わせないように様々な規制ができたのですが、これらの規制を、「プルデンシャル規制」といいます。

    <市場や証券に関する規制>

    上記の金融機関に直接規制することに加えて、市場(証券の取引)にも規制をかけて、金融機関が連鎖的に破たんしない仕組みを作ろうということになりました。中でも、これまでほとんど規制されてこなかった店頭デリバティブの取引に対して規制をかけようということになりました。

    店頭デリバティブとは、これまでの金融危機の記事でも書いてきたようなCDSといったデリバティブ商品は、上記の店頭取引で行われるのが基本でした。それを、しっかりと当局が管理できるような仕組みを作り上げようというのがこの規制の主要な目的になります。具体的には、以下のような規制をかけようということになりました。

  • 電子取引基盤:名前がアレですが、ここで取引を行うということです
  • 清算集中:清算期間でデリバティブ取引を決済するということです
  • 取引報告:取引に関する情報を情報蓄積機関に報告するということです
  • 取引保存:取引に関する情報を保存するということです

  • ざっくりいうと上記のようなことを金融機関に課す規制が出来たということです。

    わかりにくいので少し説明すると、「電子取引基盤」で金融機関はデリバティブの取引をしなければなりません。そこで取引することによって、当局がどのような取引をしているかを管理しやすくなります。また「清算集中」といって、デリバティブの決済を、清算を行う機関で行わなければなりません。決済期間を仲介してデリバティブ取引を行うことによって、仮に片方の金融機関が破たんしても、もう片方の金融機関に影響がないようにする仕組みになります。また、取引を行った金融機関は、取引の情報を蓄積する期間に、どのような取引を行ったのかという取引の情報を報告しなければならず、それに加えて、それらの情報を保存しなければなりません。これも、誰が誰とどのような取引をしたのかをわかりやすくするための仕組みになります。

    ずらずらと記載したので意味が分からないと思いますが、それくらい膨大な規制が一気に金融機関に課せられることになりました。それ以外にも、報酬に関する規制であったり、開示に関する規制であったり、シャドーバンキングに関する規制であったりと、金融業界に対して膨大な数の規制が現在進行形で行われています。

    これで、現在どのような規制が金融業界に課せられつつあるのかについてみてきました。金融危機によって不景気になり、それによって不利益を被った人たちが金融業界に対して怒りを感じ、政治家を通して規制をかけるのは普通に理解も共感もできますが、個人的には金融機関に関する規制は「収益連動型報酬の廃止」と「投資銀行と銀行業務の分離」の2つだけで済むような気がします。あと別の観点からは、影響があるからと言って当局が税金を使って金融機関を救済する仕組みも禁止すべきだと思います。あほなことをしたところはつぶれる、これが資本主義の基本であるはずです。わざわざ税金を使って救済する必要はありませんし、ぎりぎり救済するとしても預金者だけであるべきです。

    長くなってしまったので、このあたりにしておこうと思います。

    ではでは


    posted by 鈴木明 at 23:28 | [金融] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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