2015年03月26日

財務諸表解説〜貸借対照表編8〜

財務分析のための財務諸表解説、今までは貸借対照表と、その内訳である資産とその中の流動資産と固定資産、そしてもうひとつの内訳である負債とその中の流動負債と固定負債、そして最後の内訳である純資産の中の株主資本についてみてきました。

貸借対照表
貸借対照表の内訳
貸借対照表:資産の部・流動資産
貸借対照表:資産の部・固定資産
貸借対照表:負債の部・流動負債
貸借対照表:負債の部・固定負債
貸借対照表:純資産の部・株主資本

今回は、貸借対照表の最後の内訳である純資産の部の、その他の包括利益の箇所についてみていきたいと思います。

*再度書きますが、これらは財務分析を行うために思いっきり簡素化しているので、仮に試験などで回答する際はちゃんとした定義で答えてください。

さて、今回は純資産のその他の包括利益ということですが、この名前の時点で、既に「いやがらせ」の領域に入っていると個人的には感じます。意味不明ですから。ただ、英語にしてみてもOther Comprehensive Incomeということで意味不明です。なので、名前は置いておいて、一体どういうものがその他の包括利益に含まれているのかということに重点を置いて説明していこうと思います。

<その他の包括利益の内訳>

今回も実際に見ていくのは江崎グリコの平成25年3月31日の有価証券報告書の貸借対照表になります。その中で、その他の包括利益の箇所には以下のような勘定科目が並んでいます。

  • その他有価証券評価差額金
  • 繰延ヘッジ損益
  • 為替換算調整勘定
  • 一般の人が見ると、どう考えても理解できない単語が並んでいますが、一体どういったものなのかについてものすごく簡単にそれぞれを説明して、どのような共通点があるのか(つまり、どのようなものがその他の包括利益となるのか)を書いていきたいと思います。

    <その他有価証券評価差額金>

    その他有価証券評価差額金とは何かについてですが、まず会計的にどのようにとらえられているかを書いてみると

    その他有価証券評価差額金とは、その他有価証券に時価会計を適用した場合には、期末に時価評価を行うが、この時価評価に伴う含み損益、つまり評価差額を損益計算には計上せず純資産に計上するための勘定科目である

    としています。わけがわかりませんね。そこで、この勘定科目がどのようなものなのかを理解するために、もう少し簡単に説明してみます。

    例えば、企業が持っている株式があります。江崎グリコも資産の部で説明したように、持ち合いの株という用途不明の株をたくさん持っています。これらは、すぐに売ったり買ったりする目的ではなく、ただなんとなく付き合いで持っていたりする場合がほとんどです。この、企業が何となく持っている株などが対象になります。これを「その他有価証券」としておきます。

    そしてこの株ですが、もちろん株価があり、毎日変動しています。その株を買った日の株価と、期末(つまり貸借対照表作成日)の株価はほとんどの場合差があります。例えば株を買った日の株価が100円で、期末の株価が80円だと、20円の損が出ていますね。これを「評価差額金」としておきます。

    ただ、企業からすると、すぐに売るつもりはないので、その年の損益にはしたくありません。なぜなら、まだ保有するつもりで、売るまで損失が発生しないからです。これを「含み損」といいます。もし逆に株価が上がっている場合は「含み益」と言います。

    上記のように、何となく持っている株式の株価が現時点でどの程度買った時から値上がり(もしくは値下がり)しているかを示すのが「その他有価証券評価差額金」なのです。

    まとめると「何となく持っている株の株価が今どれくらい得か損か」を示しているというものになります。次に、繰延ヘッジ損益について説明していきます。

    繰延ヘッジ損益

    この科目は、ヘッジ会計という会計の話が関わってくるので、簡単に説明することは難しいです。そこで、以下のように考えておくと問題はありません。

    「会計基準により潜伏している利益(または損失)」

    難しいことは置いておいて、プラスだったら良いこと、マイナスであれば良くないものと覚えておけば大丈夫です。財務分析をする際にはあまりにも巨額な場合を除いて無視でも大丈夫です。

    念のため、どうしてもどのようなものか少しでも知りたいという人のために、軽く説明しておくと、繰延ヘッジ損益とは、当期に発生するべきであったヘッジの損益を繰り延べたものになります。

    具体的にいうと、資産(持ち物)または負債(借金)の中に、時価評価しないものがあるとします。このものに対するリスクをヘッジするために、例えば先物取引などの時価評価されるデリバティブを使用するとします。このデリバティブに関しては価格変動があり、通常は毎期ごとに時価評価を行い、その損益を計上しなければならないのですが、ヘッジ手段として適格と認められるデリバティブはその損益をヘッジ対象の損益が計上される時期まで繰り延べることができます。その時に登場するのが繰延ヘッジ損益となります。

    この、無理やりヘッジ対象とヘッジ手段の損益を計上する時期を合わせる会計を「ヘッジ会計」といいます。正直、ざっくりと財務分析をするのにここまで理解する必要はありません。金額が膨大であれば、そのような企業はさっさと無視しましょう。

    為替換算調整勘定

    次に、為替換算調整勘定ですが、これも完全に混乱するような名称になっています。これを会計的にみてみると、以下のようになります。

    為替換算調整勘定とは、在外子会社の財務諸表の換算手続きを行うことによって発生するものである。決算時の為替相場で換算される資産及び負債の円貨額と、取得時や発生時の為替相場で換算される資本項目の円貨額との差額のことをいう。

    意味不明ですね。もう少し簡単にいうため、具体例をあげてみます。

    A株式会社はグローバル企業で、海外に子会社をたくさんもっています。決算時期が来たので、貸借対照表を作成する必要があります。そこで、子会社のアメリカA株式会社から貸借対照表を送ってもらいました。すると、円ベースではなくドルベースでの貸借対照表が送られてきました。アメリカの通貨はドルなので、通貨はドルを使って貸借対照表を作成していたのです。ここで、ドルから円へと再計算する必要がでてきました。この、ドルから円に為替レートを使って計算することを「換算する」と言います。

    ここで、会計のルールなのですが、資産、負債と純資産でいつの為替レートを使用するかについて違いがあるのです。意味不明だと思いますが、それがルールなのです。例えば、資産の現金に関しては期末日のレートで換算、そして純資産については取得したときのレートで換算するとなると、資産と負債+純資産で金額が一致するはずがありません。そのときに差額がでると、「為替換算調整勘定」として純資産に登場するのです。

    さすがに混乱すると思いますが、簡単に言うと、子会社の貸借対照表を円に直したらプラス(またはマイナス)だったよ、というだけの話です。

    以上が純資産の部のその他の包括利益の箇所の説明になります。正直、その他の包括利益に関しては会計の話が多くなるので、基本的にはスルーで大丈夫です。その他の包括利益の箇所を簡単なようにしてみると、以下のようになります。

    <純資産の部:その他の包括利益簡単編>

  • その他有価証券評価差額金
    →なんとなく持っている株の株価が今どれくらい得か損か
  • 繰延ヘッジ損益
    →会計ルール上生まれた潜伏している利益または損失
  • 為替換算調整勘定
    為替レートと会計ルールで生まれた潜伏している利益または損失
  • その他の包括利益はざっくりと財務分析する際には不要だと割り切っていただいても大丈夫です。あまりにも金額が巨大な企業はあえてスルーしても良いかもしれません。これで、純資産の部の説明を終わりたいと思います。今回で財務諸表の解説の、貸借対照表編が終了です。次からは損益計算書の説明をしたいのですが、まずは貸借対照表を簡単に見るとどのようなことが書いてあるのかを実際に見てみたいと思います。そのあとに損益計算書の説明にはいっていきたいと思います。

    次の記事:貸借対照表簡単編

    ではでは


    posted by 鈴木明 at 22:22 | [財務分析・企業分析] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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