2015年04月13日

財務諸表解説〜損益計算書編〜

財務分析のための財務諸表解説、今までは貸借対照表について何回かに分けてみてきました。

貸借対照表
貸借対照表の内訳
貸借対照表:資産の部・流動資産
貸借対照表:資産の部・固定資産
貸借対照表:負債の部・流動負債
貸借対照表:負債の部・固定負債
貸借対照表:純資産の部・株主資本
貸借対照表:純資産の部・その他の包括利益
貸借対照表:簡単に表示

ちょっとした復習になりますが、貸借対照表とは、BSとも呼ばれ、企業の財政状態を示すものとして利用されます。中には何が記載してあるかというと、企業がその時点で何を持っているのか、そしてその持ち物はどのように手に入れたのかということでした。詳しくは、それぞれのリンクを見ていただければと思います。そして今回は、それとは別の財務諸表である「損益計算書」についてみていきたいと思います。

<損益計算書とは>

まずは、損益計算書とはどのようなものかについて説明していきます。損益計算書とは、企業の1年間の成績表のようなものであり、一般的には以下のように説明されています。

損益計算書とは、企業のある一定期間における収益と費用の状態を表すもの

ここで重要なことは、「ある一定期間」という点になります。基本的には1年間になります。日本の企業の大半が4月1日から3月31日の期間で計算を行っています。そのため、「今年は成績が良くなかったから1年と2か月分の損益計算書を作ろう」などは絶対に許されないようになっています。毎年1年間の成績を記載するのがルールです。では次に、損益計算書にはどのようなことが書いてあるのかの内訳について説明していきます。

<損益計算書の内訳>

損益計算書のフォーマットは、日本では会社法の会社計算規則という箇所に定められています。つまり、ほとんどすべての会社が同様のフォームを使用して損益計算書を作成しなければなりません。このことによって、われわれのような損益計算書を見る人が、様々な企業の損益計算書を比較することによりその企業の特徴をよく深く理解することができるのです。その会社計算規則で定められている規定を使用して作成した損益計算書の中身は、ざっくりみると以下のようになります。

  • 1:売上高
  • 2:売上原価
  • 3:売上総利益
  • 4:販売費及び一般管理費
  • 5:営業利益
  • 6:営業外収益
  • 7:営業外費用
  • 8:経常利益
  • 9:特別利益
  • 10:特別損失
  • 11:税引前当期純利益
  • 12:法人税等
  • 13:当期純利益(税引後当期純利益とも)
  • 財務分析を行えば行うほど、このフォームが非常に優れていることがわかります。慣れないうちは「営業」や「営業外」、「収益」や「利益」といった、似たような響きの言葉に惑わされてしまうと思いますが、ひとつひとつどのようなものかしっかりと理解すれば、いずれこの並びがしっくりと来る日が来ます。僕も昔に購入した財務分析の参考書を見れば「経常利益とは」といったことを書いた付箋などがたくさん貼ってあります。そこでまずは、上記の項目について簡単に見ていこうと思います。

    ※注意点になりますが、あくまでも僕の理解に基づく説明になりますので、実際に試験などで定義を答える質問ではしっかりとした定義で答えてください。

    <1:売上高>

    まずは一番上に来る売上高についてですが、こちらは企業の本業で1年間にいくらの収益を上げたかという数字になります。会計をやっていると、いつ売上高に計上するのかという収益認識の問題などにぶち当たりますが、基本的には深いことは考えずに1年間にあげた収益の合計金額と考えていれば問題ないと思います。

    <2:売上原価>

    次に売上原価ですが、上記の売上高をあげるのに、どれだけの減価がかかったのかを示す数字になります。例えば1年間の僕の本業が100円のエンピツを1万本仕入れて、全て150円で売ったというものだとすると、上記の売上高は150万円で、売上原価は100万円になります。この例をエンピツ1本で考えると、減価は100円ということになります。

    <3:売上総利益>

    売上総利益とは、売上高から減価を引いたものになります。上記の例でいえば150万円の売上高に対し減価が100万円なので、売上総利益は50万円になります。簡単に言うと、ただ商品の売上金額とそれにかかった減価だけをピックアップしてみると、いくらの利益が残せたのかという数字になります。ここがマイナスになっている企業は相当ピンチです。100円でエンピツを仕入れて80円で売れば、ここの数字がマイナスになります。売上総利益がマイナスということがどれほど大変なことかがわかると思います。

    <4:販売費及び一般管理費>

    次に販売費および一般管理費ですが、これは上記の商品を売るのに1年間でどれほどの販売費と管理費がかかったかということになります。

    ・販売費
    販売費とは、広告を出すのにかかった費用や商品を出荷したときに運送業者に払った費用などがあげられます。

    ・一般管理費
    企業で働いている人に支払う給料や福利厚生費、建物や工場の価値を会計的に減少させる減価償却費という費用などがここに当てはまります。

    上記の例を見て分かる通り、販売費及び一般管理費とは、企業が「普通の営業活動を行うことによってかかる費用」ということができます。つまり、営業活動によって発生する費用がここまでに当てはまることになります。

    <5:営業利益>

    今まで売上高から営業活動を行うことによってかかる費用を記載してきましたが、このように営業活動によって残すことができた利益を営業利益と言います。簡単にいうと、営業利益とは「営業活動を行った結果残った利益」になります。ここがマイナスだと、企業が活動すれば損失が出ていることになってしまいますので、大変なことになります。

    <6:営業外収益>

    今まで見てきた項目が「営業利益」に関する項目だったとすると、ここから見るのが「営業外」の項目になります。こちらの営業外収益とは、まさに営業活動以外のものから得られた収益になります。例えば、上記のエンピツビジネスを考えた際、その企業に現金が余ったので定期預金を預けていて、その定期預金に利息が付きました、といったことや、余った現金で株式を購入し、その株式から配当金をもらいました。といった収益は、本業であるエンピツを売りさばくビジネスでの収益とは全く関係ありません。この本業とは関係ないところで稼いだ収益を「営業外収益」といます。

    <7:営業外費用>

    営業外収益と同様に、本業とは関係ないことに関する費用を「営業外費用」と言います。再びエンピツビジネスを例にとってみると、例えば金融期間から借り入れた借金に対して利息を支払ったりすると、こちらに当てはまります。金融機関に払う利息そのものは、エンピツを売りさばくという本業にとってほとんど関係がないためです。ちなみに最近つぶれそうで有名なシャープ株式会社の去年の損益計算書を見ると、借りたお金への支払う利息だけで1年で200億円を超えています。営業活動の後に残った利益が1000億円程度なので、この時点で営業利益の20%ほどを金利の支払だけで失う形になっています。元金の返済ではなく「金利への支払い」に200億円です。まぁ借りているお金だけで1兆円くらいあるので、2%くらいで借りているということですね。

    <8:経常利益>

    上記の営業活動によって残った「営業利益」から営業外の収益と費用を考慮したあとのものが「経常利益(または損失)」になります。ここで若干単語が難しくなるのですが「経常」とは事典を引くと「常に一定の状態で変わらないこと。平常」という意味だということがわかります。つまり、「毎年の企業活動を通して、特別なことが何も起こらなければ、これくらいの利益」というものが計上利益になります。

    <9:特別利益>

    先ほど(経常利益)までは、「特別なことがなにも起こらなければ」という話をしてきましたが、では特別なことが発生した場合はどうするのかというのがここからの話になります。それが「特別利益」と「特別損失」です。まず特別利益から説明すると、めったに発生しないことにより利益が生まれると、こちらに該当します。例えば、工場を売却したら利益がでた場合などです。工場の売却などはめったに発生しないことなので、通常の活動(経常利益まで)とは区別するのです。

    <10:特別損失>

    特別利益とは逆に、めったに発生しないことにより損失がでた場合は、特別損失としてこれも分けて計上することになります。例えば、20年ぶりの大洪水で海外の工場が流されたといった場合や、100年ぶりの火山の噴火で倉庫の在庫が全部ダメになりました、といった場合などです。これに関する損失は特別損失となります。

    <11:税引前当期純利益>

    ここまで様々な収益と費用を見てきましたが、特別な利益と損失を考慮したあとに残る利益が、税引前の当期純利益になります。これが会社のもとに残った利益と思いきや、今度はこの数字をもとに、今度は政府が税金を課してきます。だから税引前とついているのですね。

    <12:法人税等>

    税引前当期純利益をもとに、納めるべき税金が決定します。それが法人税等です。早い話が税金です。

    <13:当期純利益>

    売上高から売上原価を引き、販売費及び一般管理費を引き、営業外利益を足し、営業外費用を引き、特別利益を足し、特別損失を引き、そこから税金を引いたものが、ようやく当期純利益として会社に残ります。会社に残るということは、投資家のものになるということです。この当期純利益は、今まで説明してきた貸借対照表の純資産の部の利益剰余金に積み上げられることになります。一般的にはこの当期純利益をたくさん計上できる会社が、投資家にとっての良い会社ということができます。

    一気に見てきましたが、これにて、損益計算書の中身の説明を終わりたいと思います。貸借対照表とは違い、損益計算書は上記のフレーム(売上高→減価→営業活動→計上活動→特別事象→税金→利益)を理解すればわかりやすいので、気になる会社の損益計算書を見たり、働いている人は経理部などに頼んで自社の損益計算書を見せてもらったりすると意外な発見があり楽しいかもしれません。

    次は、最後の重要な財務諸表である、キャッシュフロー計算書についてみていきたいと思います。キャッシュフロー計算書で、全ての財務諸表の説明が終わることになります。

    次の記事:キャッシュフロー計算書

    ではでは

    posted by 鈴木明 at 21:41 | [財務分析・企業分析] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2015年04月05日

    財務諸表解説〜貸借対照表編9〜

    財務分析のための財務諸表解説、今までは貸借対照表の中身についてみてきました。

    貸借対照表
    貸借対照表の内訳
    貸借対照表:資産の部・流動資産
    貸借対照表:資産の部・固定資産
    貸借対照表:負債の部・流動負債
    貸借対照表:負債の部・固定負債
    貸借対照表:純資産の部・株主資本
    貸借対照表:純資産の部・その他の包括利益

    今回は、貸借対照表の中身を全て簡単に見ていき、実際に貸借対照表にはどのようなものが記載されているのかを見ていきたいと思います。

    *再度書きますが、これらは財務分析を行うために思いっきり簡素化しているので、仮に試験などで回答する際はちゃんとした定義で答えてください。

    さて、今回も今まで通り江崎グリコの平成25年3月31日の有価証券報告書の貸借対照表を使っていきたいと思います。コツとして、「その他もろもろ」を無視することがあげられます。以下に簡単なものしか書いていないかがわかると思います。

    <江崎グリコ貸借対照表:そのまま>

    資産の部持ち物リスト
    流動資産1年以内に現金化できる持ち物
    現金及び預金現金や銀行預金
    受取手形及び売掛金あとでお金をもらえる権利
    有価証券株式や国債など
    商品及び製品ポッキーやアイスの実(完成品)
    仕掛品作っている最中のポッキーなど
    原材料及び貯蔵品小麦粉などの原材料
    前渡金その他もろもろ
    前払費用その他もろもろ
    短期貸付金その他もろもろ
    繰延税金資産その他もろもろ
    その他その他もろもろ
    貸倒引当金その他もろもろ
    流動資産合計1年以内に現金化できる持ち物の合計
    固定資産長期間利用して、売上を生み出すもの
    有形固定資産触れる固定資産
    建物及び構築物本社ビルなどの建物
    機械装置及び運搬具ポッキー作る機械や運ぶ車
    工具、器具及び備品パソコンや机、工場にあるペンチなど
    土地土地
    リース資産借り物(ほぼ自分のもの)
    建設仮勘定建設中の工場や建物
    有形固定資産合計触れる固定資産合計
    無形固定資産触れない固定資産
    ソフトウエア社内システムなど
    その他その他もろもろ
    無形固定資産合計触れない固定資産合計
    投資その他の資産投資やその他の持ち物
    投資有価証券持ち合いの株式や長期の国債
    長期貸付金その他もろもろ
    長期前払費用その他もろもろ
    繰延税金資産その他もろもろ
    その他その他もろもろ
    貸倒引当金その他もろもろ
    投資その他の資産合計投資やその他の資産合計
    固定資産合計長期間利用して売上を生み出すものの合計
    資産合計持ち物合計

    次に、負債純資産の部を見ていきます。
    負債の部 借金の部
    流動負債 1年以内に返す借金
    支払手形及び買掛金 あとで支払う義務
    短期借入金 1年以内に返す借金
    1年以内返済予定の長期借入金 1年以内に返す長く借りていた借金
    未払費用 あとで払う費用
    未払法人税等 あとで払う税金
    販売促進引当金 あとで値引きする義務
    役員賞与引当金 その他もろもろ
    事業構造改善引当金 その他もろもろ
    その他 その他もろもろ
    流動負債合計 1年以内に返す借金合計
    固定負債 1年以上返済を待ってもらえる借金
    長期借入金 銀行からの1年以上返さなくて良い借金
    退職給付引当金 従業員へ将来払う退職金
    事業構造改善引当金 その他もろもろ
    その他 その他もろもろ
    固定負債合計 1年以上返済を待ってもらえる借金合計
    負債合計 借金合計
    純資産の部 投資家の持ち分
    株主資本 投資家の持ち分
    資本金 会社立ち上げ時に投資家がぶち込んだ数字
    資本剰余金 その他もろもろ
    利益剰余金 利益が積みあがった数字
    自己株式 その他もろもろ
    株主資本合計 投資家の持ち分合計
    その他の包括利益累計額 その他の包括利益累計額
    その他有価証券評価差額金 なんとなく持っている株の株価がどれくらい得か損か
    繰延ヘッジ損益 会計ルール上生まれた潜伏している利益または損失
    為替換算調整勘定 為替レートと会計ルールで生まれた潜伏している利益または損失
    その他の包括利益累計額合計 その他の包括利益累計額合計
    少数株主持分 その他もろもろ
    純資産合計 投資家の持ち分合計
    負債純資産合計 借金と投資家の持ち分合計

    このように、通常の貸借対象表の中身を簡単にして比べてみると、何となくわかりやすくなったのではないでしょうか。このように、貸借対照表に記載してあることは、企業の持ち物と、それをどのように手に入れたのか(つまり借金したのか投資家からの投資なのか)ということが書かれているにすぎません。その貸借対照表を財務分析に使用する際には、どのような持ち物を多く持っている企業なのか、借金が多い企業なのか、今まで利益をしっかりと積み上げてきた企業なのか、という色んな視点が考えられます。これは、全ての財務諸表に関する説明が終わった後に、実際に企業を分析することによってどのように貸借対照表を活用すればよいかを見ていきたいと思います。

    これで、貸借対照表の説明を終わりたいと思います。次からは、もう一つの重要な財務諸表である、損益計算書についてみていきたいと思います。

    次の記事:損益計算書の解説

    ではでは

    posted by 鈴木明 at 22:41 | [財務分析・企業分析] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2015年03月26日

    財務諸表解説〜貸借対照表編8〜

    財務分析のための財務諸表解説、今までは貸借対照表と、その内訳である資産とその中の流動資産と固定資産、そしてもうひとつの内訳である負債とその中の流動負債と固定負債、そして最後の内訳である純資産の中の株主資本についてみてきました。

    貸借対照表
    貸借対照表の内訳
    貸借対照表:資産の部・流動資産
    貸借対照表:資産の部・固定資産
    貸借対照表:負債の部・流動負債
    貸借対照表:負債の部・固定負債
    貸借対照表:純資産の部・株主資本

    今回は、貸借対照表の最後の内訳である純資産の部の、その他の包括利益の箇所についてみていきたいと思います。

    *再度書きますが、これらは財務分析を行うために思いっきり簡素化しているので、仮に試験などで回答する際はちゃんとした定義で答えてください。

    さて、今回は純資産のその他の包括利益ということですが、この名前の時点で、既に「いやがらせ」の領域に入っていると個人的には感じます。意味不明ですから。ただ、英語にしてみてもOther Comprehensive Incomeということで意味不明です。なので、名前は置いておいて、一体どういうものがその他の包括利益に含まれているのかということに重点を置いて説明していこうと思います。

    <その他の包括利益の内訳>

    今回も実際に見ていくのは江崎グリコの平成25年3月31日の有価証券報告書の貸借対照表になります。その中で、その他の包括利益の箇所には以下のような勘定科目が並んでいます。

  • その他有価証券評価差額金
  • 繰延ヘッジ損益
  • 為替換算調整勘定
  • 一般の人が見ると、どう考えても理解できない単語が並んでいますが、一体どういったものなのかについてものすごく簡単にそれぞれを説明して、どのような共通点があるのか(つまり、どのようなものがその他の包括利益となるのか)を書いていきたいと思います。

    <その他有価証券評価差額金>

    その他有価証券評価差額金とは何かについてですが、まず会計的にどのようにとらえられているかを書いてみると

    その他有価証券評価差額金とは、その他有価証券に時価会計を適用した場合には、期末に時価評価を行うが、この時価評価に伴う含み損益、つまり評価差額を損益計算には計上せず純資産に計上するための勘定科目である

    としています。わけがわかりませんね。そこで、この勘定科目がどのようなものなのかを理解するために、もう少し簡単に説明してみます。

    例えば、企業が持っている株式があります。江崎グリコも資産の部で説明したように、持ち合いの株という用途不明の株をたくさん持っています。これらは、すぐに売ったり買ったりする目的ではなく、ただなんとなく付き合いで持っていたりする場合がほとんどです。この、企業が何となく持っている株などが対象になります。これを「その他有価証券」としておきます。

    そしてこの株ですが、もちろん株価があり、毎日変動しています。その株を買った日の株価と、期末(つまり貸借対照表作成日)の株価はほとんどの場合差があります。例えば株を買った日の株価が100円で、期末の株価が80円だと、20円の損が出ていますね。これを「評価差額金」としておきます。

    ただ、企業からすると、すぐに売るつもりはないので、その年の損益にはしたくありません。なぜなら、まだ保有するつもりで、売るまで損失が発生しないからです。これを「含み損」といいます。もし逆に株価が上がっている場合は「含み益」と言います。

    上記のように、何となく持っている株式の株価が現時点でどの程度買った時から値上がり(もしくは値下がり)しているかを示すのが「その他有価証券評価差額金」なのです。

    まとめると「何となく持っている株の株価が今どれくらい得か損か」を示しているというものになります。次に、繰延ヘッジ損益について説明していきます。

    繰延ヘッジ損益

    この科目は、ヘッジ会計という会計の話が関わってくるので、簡単に説明することは難しいです。そこで、以下のように考えておくと問題はありません。

    「会計基準により潜伏している利益(または損失)」

    難しいことは置いておいて、プラスだったら良いこと、マイナスであれば良くないものと覚えておけば大丈夫です。財務分析をする際にはあまりにも巨額な場合を除いて無視でも大丈夫です。

    念のため、どうしてもどのようなものか少しでも知りたいという人のために、軽く説明しておくと、繰延ヘッジ損益とは、当期に発生するべきであったヘッジの損益を繰り延べたものになります。

    具体的にいうと、資産(持ち物)または負債(借金)の中に、時価評価しないものがあるとします。このものに対するリスクをヘッジするために、例えば先物取引などの時価評価されるデリバティブを使用するとします。このデリバティブに関しては価格変動があり、通常は毎期ごとに時価評価を行い、その損益を計上しなければならないのですが、ヘッジ手段として適格と認められるデリバティブはその損益をヘッジ対象の損益が計上される時期まで繰り延べることができます。その時に登場するのが繰延ヘッジ損益となります。

    この、無理やりヘッジ対象とヘッジ手段の損益を計上する時期を合わせる会計を「ヘッジ会計」といいます。正直、ざっくりと財務分析をするのにここまで理解する必要はありません。金額が膨大であれば、そのような企業はさっさと無視しましょう。

    為替換算調整勘定

    次に、為替換算調整勘定ですが、これも完全に混乱するような名称になっています。これを会計的にみてみると、以下のようになります。

    為替換算調整勘定とは、在外子会社の財務諸表の換算手続きを行うことによって発生するものである。決算時の為替相場で換算される資産及び負債の円貨額と、取得時や発生時の為替相場で換算される資本項目の円貨額との差額のことをいう。

    意味不明ですね。もう少し簡単にいうため、具体例をあげてみます。

    A株式会社はグローバル企業で、海外に子会社をたくさんもっています。決算時期が来たので、貸借対照表を作成する必要があります。そこで、子会社のアメリカA株式会社から貸借対照表を送ってもらいました。すると、円ベースではなくドルベースでの貸借対照表が送られてきました。アメリカの通貨はドルなので、通貨はドルを使って貸借対照表を作成していたのです。ここで、ドルから円へと再計算する必要がでてきました。この、ドルから円に為替レートを使って計算することを「換算する」と言います。

    ここで、会計のルールなのですが、資産、負債と純資産でいつの為替レートを使用するかについて違いがあるのです。意味不明だと思いますが、それがルールなのです。例えば、資産の現金に関しては期末日のレートで換算、そして純資産については取得したときのレートで換算するとなると、資産と負債+純資産で金額が一致するはずがありません。そのときに差額がでると、「為替換算調整勘定」として純資産に登場するのです。

    さすがに混乱すると思いますが、簡単に言うと、子会社の貸借対照表を円に直したらプラス(またはマイナス)だったよ、というだけの話です。

    以上が純資産の部のその他の包括利益の箇所の説明になります。正直、その他の包括利益に関しては会計の話が多くなるので、基本的にはスルーで大丈夫です。その他の包括利益の箇所を簡単なようにしてみると、以下のようになります。

    <純資産の部:その他の包括利益簡単編>

  • その他有価証券評価差額金
    →なんとなく持っている株の株価が今どれくらい得か損か
  • 繰延ヘッジ損益
    →会計ルール上生まれた潜伏している利益または損失
  • 為替換算調整勘定
    為替レートと会計ルールで生まれた潜伏している利益または損失
  • その他の包括利益はざっくりと財務分析する際には不要だと割り切っていただいても大丈夫です。あまりにも金額が巨大な企業はあえてスルーしても良いかもしれません。これで、純資産の部の説明を終わりたいと思います。今回で財務諸表の解説の、貸借対照表編が終了です。次からは損益計算書の説明をしたいのですが、まずは貸借対照表を簡単に見るとどのようなことが書いてあるのかを実際に見てみたいと思います。そのあとに損益計算書の説明にはいっていきたいと思います。

    次の記事:貸借対照表簡単編

    ではでは

    posted by 鈴木明 at 22:22 | [財務分析・企業分析] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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