2015年02月22日

リーマンショックその後

今更聞けない金融危機、これまではサブプライム問題からリーマンショックまでを見てきました。非常に長かったです。それぞれの記事は以下になります。

サブプライム問題
パリバ・ショック
金融機関破たんの発生プロセス
ベア・スターンズと投資銀行
リーマンショック1
リーマンショック2

今回は、その金融危機が発生した後の世界の流れについてみていきたいと思います。100年に1度と呼ばれた金融危機が発生した後、世界経済は停滞し、たくさんの失業者が発生しました。その原因となった金融機関たちに対して、世界中の一般市民から「もっと規制を厳しくしろ」「金融機関のやつらに調子にのらせるな」、という声が上がりました。そして、二度とこのような問題を発生させないようにするため、世界のトップが集合し、世界に向けて声明を出しました。それが、G20のピッツバーグ・サミットです。

<G20ピッツバーグ・サミット>

G20というのは、簡単に言うと「自分の国はすごい、世界をリードしている優秀な国家である」と思っている国たちの集まりです。昔はG7(アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、日本)だけだったのですが、近年ではG7だけで世界経済をけん引していた時代は終わり、現在では自分たちをすごいと思っている国は大きく増えてG20(G7にEU、南アフリカ、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ロシア、サウジアラビア、トルコ、オーストラリア、インド、インドネシア、中国、韓国を加えたもの)となっています。

そのG20が、アメリカのピッツバーグに集まり、話し合いを行い、これから金融機関や市場が今後どのようにあるべきかについての表明を行いました。これがG20ピッツバーグ・サミットの首脳声明と呼ばれています。ネットで検索すると、外務省などのホームページで日本語に翻訳されたものなどをみることができます。その内容には、この公表から現在まで続く、金融機関や市場への規制の方向性が示されています。現在、金融機関や市場に様々な形で規制が現在進行形でかけられており、今回はその規制についてざっくりとみていこうと思っているのですが、どのような規制がかけられているかを確認する前に、今回の金融危機が発生したことに対し、実際はどのようなことが問題だったのかを書くと理解が深まると思いますので、まずはそちらから確認していきたいと思います。

<金融危機で判明した問題点>

今まで、金融危機に関しての経緯を見てきたのですが、結局は何が問題だったのでしょうか。考えられる問題点を列挙していくと、非常に多くの問題点があげられるのですが、これらを大きくまとめると、3つ(実質は2つ)の大きな問題にまとめることができます。

問題点1:金融機関そのものに関する問題

金融危機の問題点の一つ目は、金融機関そのものに対する問題になります。当然の話ですが、金融機関が健全であれば問題は発生しなかったはずです。例えば、銀行は預金者から預かったお金をしっかりと与信審査をした企業などに貸し出し、そのローンの利子で収益を出す本来のビジネスモデルに忠実になっていれば今回の問題はあっさりと切り抜けられたはずです。その他の金融機関も本来のビジネスをしっかりと行っていればこの問題では大きくダメージをうけることはなかったでしょう。

ところが、金融機関は本来の業務から離れたサブプライム投資に熱心になり、結果的にあのような結末になってしまいました。しかも、「Too big to fail」と言われるように、金融機関はつぶれるとその影響が預金者など、非常に広範囲にわたります。その経済活動上、非常に重要な地位にある金融機関がつぶれそうになること、それが一つ目の問題です。

問題点2:市場に関する問題

二つ目の問題として、この金融危機の際、一つの金融機関が破たんすると、それに連鎖するようにバタバタと周りの金融機関もつぶれる事態になりました。つまり、市場を通して危機が連鎖していくことが問題とされました。ぷよぷよの連鎖みたいなものですね。その問題を大きくした原因の一つとして、「店頭取引」があげられます。

店頭取引とは、取引の当事者が、取引所を介さずに自分たちで直接やりとりする取引(相対取引)のことです。なぜ日本人はこのようなわかりにくい単語(だって店頭取引ですよ)にするのか不思議ですが、店頭取引とは具体的に言えば、A銀行とB銀行が、直接電話などで「○○を100円で売ってよ」「OKだよ」とやりとりすることを指します。取引所を介さないことが特徴です。逆に、一般人が株式を売買したいときなどは、例えば東京証券取引所を介して行います。東京証券取引所に株を買いたい人や売りたい人が集まり(厳密には証券会社を通して)、取引所を介して株の売買をするのです。これにより、金融庁などは東京証券取引所を管理すれば全ての売買を管理することができます。

ところが、上記のような銀行と銀行が直接やりとりするような店頭取引だと、誰がどれだけの取引を行っているかを金融機関の管理している国の機関(金融庁など、当局という)は管理することができません。仮にできたとしても膨大な労力が必要となります。このような状況のため、リーマンブラザーズがつぶれたとき、当局は誰がどれだけ取引を行っているのかを適切に把握することができませんでした。このように、取引所を介さない取引が大量に行われていたことも、金融危機の拡大の原因となってしまいました。

問題点3:その他の問題

そして、上記の金融機関そのもの、市場に関する問題以外にある、その他の細かい問題がありました。例えば、金融機関で働いている人に対する収益に連動する報酬が高すぎることや、金融機関が開示する情報の内容が十分でないといったことなどです。

このように、金融機関そのもの、市場、そしてその他の細かい問題が複雑に絡み合って、巨大な規模の不況を生み出してしまいました。そのため、上記のようにG20が集まり、これらのそれぞれの問題に対して、今後に同様の問題を起こさないために、それぞれに規制をかけていこうという流れになりました。以下からは、特に重要である金融機関そのものと、市場に対する規制についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

<プルデンシャル規制>

こちらは、金融機関そのものに対する規制になります。まず、銀行がまともな経営を行うようにするために、銀行をがちがちに規制で固める規制が生み出されました。それが「バーゼルV」です。これまでも銀行を規制するバーゼルUというものがあったのですが、今回の金融危機の発生を防ぐことが出来なかったということで、バーゼルUを大幅に強化して「バーゼルV」というものを作りました。

バーゼルVにて主に規制されているものは以下になります。

  • 証券化商品への資本賦課:証券化商品に投資する際に、自己資本の要求
  • トレーディング勘定への資本賦課:トレーディング勘定の取引に対する自己資本の要求
  • レバレッジ比率規制:大きくレバレッジをかけられないように水準を制限

  • などになります。専門用語ばかりでいやになるかもしれませんが、つまりは銀行に本来のビジネスモデル以外の業務を行う際にはより多くの自己資本を要求するような規制ができたのです。他にも、流動性を確保するための規制などが課せられることになりました。これらを通して、銀行が破たんすること自体を防ごうということになりました。

    さらには、仮に破たんしたときにどのように処理を行うかを事前に計画しておくように、という規制も出来上がりました。一定規模以上の銀行は、自分が破たんしたときにどのようにするのかを計画しなければならなくなりました。このように、銀行が今回の金融危機を発生させたことを二度と行わせないように様々な規制ができたのですが、これらの規制を、「プルデンシャル規制」といいます。

    <市場や証券に関する規制>

    上記の金融機関に直接規制することに加えて、市場(証券の取引)にも規制をかけて、金融機関が連鎖的に破たんしない仕組みを作ろうということになりました。中でも、これまでほとんど規制されてこなかった店頭デリバティブの取引に対して規制をかけようということになりました。

    店頭デリバティブとは、これまでの金融危機の記事でも書いてきたようなCDSといったデリバティブ商品は、上記の店頭取引で行われるのが基本でした。それを、しっかりと当局が管理できるような仕組みを作り上げようというのがこの規制の主要な目的になります。具体的には、以下のような規制をかけようということになりました。

  • 電子取引基盤:名前がアレですが、ここで取引を行うということです
  • 清算集中:清算期間でデリバティブ取引を決済するということです
  • 取引報告:取引に関する情報を情報蓄積機関に報告するということです
  • 取引保存:取引に関する情報を保存するということです

  • ざっくりいうと上記のようなことを金融機関に課す規制が出来たということです。

    わかりにくいので少し説明すると、「電子取引基盤」で金融機関はデリバティブの取引をしなければなりません。そこで取引することによって、当局がどのような取引をしているかを管理しやすくなります。また「清算集中」といって、デリバティブの決済を、清算を行う機関で行わなければなりません。決済期間を仲介してデリバティブ取引を行うことによって、仮に片方の金融機関が破たんしても、もう片方の金融機関に影響がないようにする仕組みになります。また、取引を行った金融機関は、取引の情報を蓄積する期間に、どのような取引を行ったのかという取引の情報を報告しなければならず、それに加えて、それらの情報を保存しなければなりません。これも、誰が誰とどのような取引をしたのかをわかりやすくするための仕組みになります。

    ずらずらと記載したので意味が分からないと思いますが、それくらい膨大な規制が一気に金融機関に課せられることになりました。それ以外にも、報酬に関する規制であったり、開示に関する規制であったり、シャドーバンキングに関する規制であったりと、金融業界に対して膨大な数の規制が現在進行形で行われています。

    これで、現在どのような規制が金融業界に課せられつつあるのかについてみてきました。金融危機によって不景気になり、それによって不利益を被った人たちが金融業界に対して怒りを感じ、政治家を通して規制をかけるのは普通に理解も共感もできますが、個人的には金融機関に関する規制は「収益連動型報酬の廃止」と「投資銀行と銀行業務の分離」の2つだけで済むような気がします。あと別の観点からは、影響があるからと言って当局が税金を使って金融機関を救済する仕組みも禁止すべきだと思います。あほなことをしたところはつぶれる、これが資本主義の基本であるはずです。わざわざ税金を使って救済する必要はありませんし、ぎりぎり救済するとしても預金者だけであるべきです。

    長くなってしまったので、このあたりにしておこうと思います。

    ではでは

    posted by 鈴木明 at 23:28 | [金融] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2015年02月08日

    リーマンショック2

    今更聞けない金融危機、これまではサブプライム問題から、リーマン・ブラザーズの破たんまで見てきました。

    サブプライム問題
    パリバ・ショック
    金融機関破たんの発生プロセス
    ベア・スターンズと投資銀行
    リーマンショック1

    今回は、リーマン・ブラザーズの破たんと同時期に進行していた別の問題から、リーマンショックの影響について書いていきたいと思います。

    <AIG危機>

    リーマン・ブラザーズが破たんへと突き進んでいたのと同時に、実はアメリカ1位の保険会社のAIGにも危機が迫っていました。ここにきてなぜ急に保険会社が?となるのですが、AIGが行っていた保証に問題がありました。クレジット・デフォルト・スワップ、頭文字をとってCDSです。

    CDSをどのようなものか簡単に説明すると、例えばA銀行がB企業にお金を貸し出します。そしてB企業がA銀行に対して後日に借りたお金の返済を行うという一連の流れがあるとします。A銀行にとっては、B企業が将来本当に返済してくれるのかが未確定なわけです。その返済(支払)をAIGが保証します、というものです。もちろんそれに対しての対価は必要になります。このAIGに対するA銀行からの対価支払は、B企業がつぶれる、つぶれないに関わらず支払われます。つまり、AIGにとってみればB企業がつぶれなければいくらかは丸儲けできるということです。

    AIGはその保証を、サブプライム証券化商品の支払に対して行っていました。「もしサブプライム証券化商品の支払がされなかった場合、代わりにAIGが支払います。ただし、保証料として元本の1%をもらいます。」といった具合です。リーマン・ブラザーズがダメージを受けたサブプライム証券化商品の保証を行っていたので、これらの支払が膨大になり、AIGの支払能力も危険なのではないか、というウワサが広まっていたのです。そして、リーマン・ブラザーズが破たんしたのと同じ15日、AIGの格下げが行われました。

    ただ、AIGは普通の保険会社として非常に多くのアメリカン人に保険を提供していました。この会社が倒産するということは、アメリカ人に対する影響も非常に大きいことを意味します。AIGの格下げが発表された翌日16日、アメリカ政府はAIGを救済することを発表しました。アメリカ政府がAIGの約80%を取得し、中央銀行であるFRBから9兆円の融資が行われることが決定したのです。これにより、CDSは無事に決済されるだろうという見方になりました。

    投資銀行が次々と倒れていく中、残る標的はアメリカ2位のモルガン・スタンレーと1位のゴールドマン・サックスになりました。そこで、これら2社は9月21日にそれぞれの持株会社を銀行持株会社に変更しました。なぜなら、投資銀行である限り政府からの救済を受けられない法律であったためです。この変更によって、いつでも銀行として政府からの支援を受けられるようになりました。

    ここまでの流れを見ると、リーマン・ブラザーズだけが破たんしなければならなかったのはなぜか、僕は不思議になります。ここまでで危機に陥った金融機関は、基本的に救済されていますが、どうして破たんすると非常に大きな影響を及ぼすリーマン・ブラザーズだけが見捨てられたのか、どうしてもわからないのです。どうせ破たんさせるなら全部の金融機関を見捨てるべきだったと思いますし、救済するのであればすべて救済すべきだったと思います。以下、リーマン・ブラザーズの破たんによって、影響があった例を記載していきます。

    <リーマンショックの影響>

    イギリス:HBOSが危機→ロイズTSBにより救済合併
    アメリカ:ワシントン・ミューチュアルが破たん→JPモルガンチェースが買収
    ドイツ:ドイツ・ヒポ・リアルエステートが危機→救済
    ベルギー:デクシアが危機→ベルギー、オランダ、ルクセンブルク(ベネルクス三国)が救済
    ベルギー:フォルティスが危機→ベネルクス三国が救済
    アメリカ:ワコビアが危機→ウェルズ・ファーゴが買収
    アイスランド:国内の全銀行を国有化
    日本:ニューシティ・レジデンス投資法人が破たん
    日本:大和生命保険が破たん

    などになります。また、公的資金という名の税金が下記のように投入されました。

    バンク・オブ・アメリカ:4兆円超
    シティグループ:4兆円超
    ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド:3兆円超
    ウェルズ・ファーゴ:2兆円超
    JPモルガンチェース:2兆円超
    フォルティス:2兆円超
    ゴールドマン・サックス:約1兆円
    メリルリンチ:約1兆円

    などになります。他の国の投入された税金を考えると、もっと大きな金額になります。これだけの税金を投入することによって、金融危機は少しずつ収束に向かっていきましたが、ダメージを負った金融機関が実態経済に与える影響もまた大きく、世界経済は不況になっていきました。

    <世論>

    この金融危機とそれに伴う不況によって、金融機関への世間の目は大変厳しいものになりました。それはそうですね。一般の人は普通に働いている間に、金融機関の人は怪しげな商品を発明しては世界中に売りさばき、とんでもない年収を得ていたのです。さらに、金融機関の人たちがピンチになると今度は普通に働いていた人たちの税金で救済され、そこから始まった不況により普通に働いていた人たちがクビになったり給料がカットされたり、普通に考えて許される状況ではありません。

    この状況を打開するために、金融機関に対して更なる厳しい規制をかけろという流れになりました。さらに、もう二度とこのような問題にならないような体制を作り上げようとする動きが始まりました。リーマンショックを経て、世界的な金融規制が始まったのです。

    次回は、リーマンショックの後に、世界がどのような動きになったのかについてみていきたいと思います。金融危機関連の記事が思ったより長くなってしまいましたが、いよいよラストになりそうです。

    次の記事:リーマンショックその後

    ではでは

    posted by 鈴木明 at 16:16 | [金融] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2015年02月07日

    リーマンショック1

    今更聞けない金融危機、前回まではサブプライム問題から一気にグローバルな問題であると気づくきっかけとなったパリバ・ショック、そして金融機関の破たん理由と、ベア・スターンズの救済までを見てきました。もっと軽くまとめられると甘く見ていましたが、普通に長くなってしまいました。

    サブプライム問題
    パリバ・ショック
    金融機関破たんの発生プロセス
    ベア・スターンズと投資銀行

    今回は、いよいよ有名なリーマンショックについてみていきたいと思います。背景としては、ベア・スターンズが救済された後からになります。

    <ベア・スターンズ救済後>

    パリバ・ショックによって、サブプライム証券化商品が非常に危ないものだと判明したのち、「危ない金融機関」はどこかという疑心暗鬼が発生、それによって短期借入市場に依存している投資銀行、中でも比較的規模が小さい金融機関が標的になりました。

    そのあおりを受けて、前回に記載した当時米国5位のベア・スターンズがJPモルガンチェース銀行に救済される結果となりました。これで市場には一時的に安心が戻ったのですが、別の問題が浮上し始めます。それがGovernment Sponsored Enterprise 、略してGSEと呼ばれる、政府が出資する住宅ローン公社です。

    <Government Sponsored Enterprise>

    GSEとは、アメリカの政府が出資する住宅ローン公社のことで、政府が出資してはいるものの、株式会社として独立していました。具体的な業務として、債券を発行して資金を調達し、そのお金で住宅ローンそのものや、その証券化商品を購入したり、逆に住宅ローンの消費者が払う利息をそのまま投資家へ流す証券(パススルー証券といいます)を発行したり、他には民間の金融機関が行った住宅ローンの保証を行ったりしていました。

    つまり、アメリカの住宅ローン関連の市場で非常に重要な会社としてGSEが存在していました。ただ、サブプライム問題とそれに続く金融危機により、GSEの財務状態も非常に悪化していました。数あるGSEの中でもFederal National Mortgage Association (FNMA)、通称ファニーメイと、Federal Home Loan Mortgage Corporation (FHLMC)、通称フレディマックのポートフォリオがダントツで悪化している状態になっていました。

    これらの2社が発行していた債券残高は当時のレートで約180兆円、そして保有、または保障していた住宅ローン残高は約530兆円にもなりました。とてつもない金額ですね。そして、その約530兆円の住宅ローンや証券化商品のうち、サブプライム問題により値下がりが激しいものを損失として計上することにより、2社は決算において純損失を計上していました。

    <格付会社によるGSEの格下げ>

    これを踏まえて、格付け会社のスタンダード&プアーズは両社の格下げを行いました。アメリカ的には、この2社が破たんすると、自国の住宅ローン市場が完全に混乱してしまうので、非常にまずい状態になります。また、この2社が資金調達のために発行していた債券のうち、購入した人々は大半が海外の投資家たち(海外の政府や、投資機関など)でした。これらの投資家たちは、GSEの債券を「米国政府機関が発行している債券」として安全性を考えて投資していたのです。実態はただの株式会社なのですが、イメージとしてはアメリカ政府の機関でした。

    つまり、この2社が破たんすると、海外の人にとっては米国政府の機関が破たんしたととらわれてしまうのです。この2社が、米国の信頼を揺るがす存在になっていたのです。そのため、アメリカ政府は最終的にこの2社にそれぞれ1兆円を超える出資を行い(はやい話が税金を投入し)、救済しました。この2社は2008年9月7日(日)に、アメリカ政府の管理下に置かれることになりました。しかし、この問題と同時に、大きな問題が迫ってきていたのです。それが、リーマン・ブラザーズです。

    <リーマン・ブラザーズ>

    リーマン・ブラザーズは1850年ヘンリー・リーマン、エマニュエル・リーマン、マイヤー・リーマンの兄弟によって創立されました。だから「リーマン・ブラザーズ」なのですね。当初は綿花の取引などを行っていたようです。3人の兄弟が切り盛りしている当時のシーンを想像すると、まさかこんな隆盛と結末迎えるなんて不思議な世界ですね。

    その後、徐々に債券の引き受けや資産管理業務などの金融機関業務へシフトチェンジしていきます。M&Aなどの業務も行い、アメリカで4位の地位に登りつめました。ただ、他の投資銀行と比べてまだまだ弱体であることには変わりはなく、リーマン・ブラザーズは更なる成長を求めてハイリスク・ハイリターンな投資に突き進んでいくことになります。それが、サブプライムローンです。

    サブプライムローン関連証券化商品などのおかげで、リーマン・ブラザーズは躍進します。アジアでも非常に大きな地位を築き上げることに成功します。ホリエモンで有名になった堀江貴文さんの当時のライブドアに対しては、転換社債型新株予約権付社債の発行などの資金調達も手伝っています。サブプライムが問題にならずにリーマン・ブラザーズがリスクを取り続けて躍進していたら、アジア地域では最強の投資銀行になったのかもしれません。まぁそんなに甘いものではなかったのですが。

    <リーマン・ブラザーズ凋落>

    今までに記載してきたとおり、サブプライム関連の金融商品の価格が暴落を始めると、リーマン・ブラザーズは大量に保有するそれらの商品の価格下落によって大きな損失を計上することになります。まず、2008年の第2四半期に約3,000億円の損失を計上します。この時点で、投資家や他の金融機関からは「あ、リーマン・ブラザーズは危ないかもしれない」と認識されました。つまり、リーマン・ブラザーズに対する信用が一気に悪化したわけです。そうなると流動性(支払い能力)が急激に悪化することはこれまで述べてきたとおりです。

    しかも、今回は普通の金融商品による損失の計上ではなく、数々の不安のもとになっているサブプライム関連商品による損失の計上でした。これでは、どれだけの損害が続くか誰にもわかりません。リーマン・ブラザーズの周囲の金融機関や投資家は、次々と態度を変更していきました。具体的には、これまでお金を貸してくれていたところがお金を貸さなくなったり、貸していたお金に対する更なる担保の要求を行うようになりました。担保にとられたものは、売却して現金にすることができなくなります。

    結果として、リーマン・ブラザーズの支払能力は急速に失われていきました。そして、2008年の9月に入ると、いよいよいつまで会社が続けられるかがわからなくなってきました。そして上記のGSEに政府が出資を決定した9月7日(日)の週、リーマン・ブラザーズの身売り交渉が最後の展開をみせます(リーマン・ブラザーズは、常に自分を買収してくれる相手を探していました)。ちなみに、この週でリーマン・ブラザーズの支払い能力は底をつき、倒産するだろうと言われていました。運命の週だったのです。

    <リーマン・ブラザーズ最後の週>

    まず、9日(火)に、候補であった韓国産業銀行が、出資の協議を取りやめると伝えました。つまり、買収は行わないということです。これにより、リーマン・ブラザーズの株価は一気に40%以上下落しました。ただでさえ低下していた株価が、さらに下がったのです。市場の失望を表していました。この時点で、買収を行う可能性がある金融機関はアメリカのバンク・オブ・アメリカと、イギリスのバークレイズ銀行になりました。

    <最終議論>

    2008年9月12日(金)、アメリカの中央銀行(日本銀行のような役割を持つ)FRBに、主要な金融機関のトップが集められました。議題は、リーマン・ブラザーズをどうするかということでした。この週末に買収がまとまらなかった場合、リーマン・ブラザーズは破たんすることになります。まず、バンク・オブ・アメリカは、アメリカ政府が公的資金の注入を拒否している点(ベア・スターンズを救済した方法を取らないということ)、2008年の初めに住宅ローン会社のカントリーワイドを買収して財務状態が悪化していたことを理由に、リーマン・ブラザーズを買収する候補からは外れました。次に、もう一つの候補であったバークレイズ銀行は、取締役による買収の承認までは進んだのですが、最終的にイギリス本国のFSA、Financial Service Authority、つまり日本でいう金融庁が許可しなかったために買収が不可となりました。この時点で、リーマン・ブラザーズの破たんが決定しました。

    <リーマン・ブラザーズ破たん>

    2008年9月15日(月)、リーマン・ブラザーズは連邦倒産法11条(よくチャプターイレブンと呼ばれるものです)を申請し、その158年の歴史に終止符を打ちました。158年です。その間、非常に様々なことがあっただろうと思います。様々な人々の人生を158年乗せ続けた米国4位の巨大な投資銀行が、60兆円を超える負債を抱えて倒産しました。ちなみに、そのときのリーマン・ブラザーズの格付けは「AAA」です。その倒産が金融市場に与えるインパクトはすさまじいものがありました。いわゆるリーマンショックの発生です。

    <リーマンショック>

    リーマンショックによって、市場参加者にとてつもない動揺が走りました。それは、これまで信じられていた

    「Too big to fail(大きすぎてつぶせない)」

    という概念を覆すものだったためです。もはやどれほど大きい金融機関でも、当局がなす術がないレベルまでこの問題は深刻なのだというイメージを与えてしまいました。さらに、金融機関同士も、もはや誰も信じられない状況になってしまったのです。もはや取引どころではない状態になってしまいました。

    影響としては、まず2008年9月15日(月)、リーマン・ブラザーズがチャプターイレブンを申請したのと同日、アメリカ3位の投資銀行であるメリルリンチがバンク・オブ・アメリカに吸収合併されることを発表しました。さらに、アメリカ2位のモルガン・スタンレーとアメリカ1位のゴールドマン・サックスがそれぞれの持株会社を銀行持株会社に変更しました。この変更によって、いつでも銀行として政府からの支援を受けられるようになりました。

    そして、リーマン・ブラザーズが破たんへ向かうのと同時期に、もう一つの問題も進行していました。今回は長くなったのでここで一旦切ります。次回に、リーマンショックの更なる展開について書いていきたいと思います。

    次の記事:リーマンショック2

    ではでは

    posted by 鈴木明 at 22:48 | [金融] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
    ×

    この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。